何時からだろう、爪を伸ばすようになったのは。

昔は少し長いだけで邪魔だったのに。

今では長くないと違和感がある。

何時からだろう君を目で追いかけるようになったのは。

昔は誰かに興味を持つなんて考えられなかったのに。

今では声がするだけで目が追いかけてしまう。

「おはよっ」

「うわっ」

後頭部を鞄で押され思わず転びそうになる。

「何すん…」

怒ったように言うが、その頃には君はもう行ってしまっていた。

内心ドキドキしているのがわかる。

朝から君が声なんかかけてきたせいだ。

君にとってはただのクラスメート、よくても友達。

でも君のことが

「スキ」

言葉に出してなんて軽い言葉だろうと思った。

風に舞う花びらのように。

積もることのない雪のように。

きっとこの気持ちもいつか消えてしまうのかな。

誰にも知られることなく。

君にも伝わることなく。

臆病だからきっとこの気持ちは伝わらない。

分かっているんだよ。

だって、君には他にスキな人がいるんだから。

そう、相談してきたモンね。

仲の良いあいつに誰かスキな人はいるのかって。

君の恋が成就すればいいと思ってるよ。

でも、このままだったらいいとも思ってる。

そしたら、君はまた話してくれるだろ。

どうしたら良いかって。

例え君があいつのことを考えていても、君と同じ時間を共有できる。

理由が欲しいんだよ。

君と話す口実が。

君のくるくる変わる表情を見る口実が。

喜怒哀楽の全てを見たいんだ。

それ以外の表情も。

それを声と一緒に心に焼き付ける。

いつでも思い出せるように。

そう言えば小指の爪を7ミリ伸ばしたら願いが叶う。

誰かがそんな風に言ってたっけ。

そっと小指を見てみる。

7ミリはおろか1センチ位ありそうだ。

願いが叶うなら何を願おう。

そうだ。

どうか君の恋が叶いますように。

君が幸せになりますように。

君が幸せなら、君が笑っているならそれだけで幸せだから。



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