疑問に思うこと
今年の7月7日は雨だった。
いや、正確に言うなら「今年も」だろう
去年も、その前の年も雨だった。
つまり彼女は3年連続で彼氏に会う機会を潰されたことになる。
「確かに我慢できない時間じゃない、時間じゃないよ。でも・・・でもね」
機織り場の昼休み。
こと座の星姫こと織姫は幼なじみである、かんむり座の星姫、りゅう座の星姫と
食事を取りながら愚痴をこぼしていた。
「今年は頑張っていたものね」
「そうそう。おまじないから占い、呪いっぽいものまで7日を晴れにするためなら何でもするって感じだったもんな」
幼なじみの言葉にますます落ち込んでいく織姫。
「でも昔から織姫の楽しみにしていた日って、ろくなことがないのよね」
「そんなことないよ!!」
さすがにそこは否定したい織姫だが
「そういやー
遠足とかもお前がいけないか中止になること多かったな」
二人同時に頷かれると本当に泣きたくなる。
「でもどうしてそんなに7月7日にこだわるのかしら?雨季の真っ只中だというのに…8月7日ではだめなの?」
「それは・・・」
「それはしょうがないだろ。こいつら本人の問題じゃないんだから」
本人の否定より早く、りゅう座の星姫が否定するがかんむり座の星姫はにっこり微笑みこう言った。
「みんなで頼んでみたら案外OKが出るかもしれないわ」
「駄目だ!!」
「どうして駄目なの?」
「どうしてもだ!!!」
延々5分も不毛な押し問答は繰り返されていた。
「おい、もう諦めようぜ。あきてきたし」
「そうねぇ。織姫、そろそろ諦めたら?」
「でも!?」
不服そうにする織姫とは対照的に当然だとでも言いたげな父親の天帝の顔を見比べ彼女は続ける。
「だって仕方ないじゃない。天帝はどうあっても貴女と彦星さんを別れさせたいんですもの」
その場にいた全員が凍りついた。
「なっ・・・本当なの?お父様!!」
「何を…どうしてわしがそのような事をしなくてはいけないのだ?」
「知らないわ。ただ別れさせる必要がないならどうして新暦になったのに織姫に教えてあげないの?」
「新暦?」
不思議そうに首をかしげる織姫とりゅう座の星姫。
「地上は現在古とは違う暦のつけ方をしているのよ。古いのを旧暦、現在のを新暦というわ。その差は約一ヶ月」
「だからおまえは8月7日じゃ駄目なのかって聞いてたのか?」
「ええ。で、天帝。どうするの?」
「・・・・・・勝手にするがいい。わしはもう知らん」
そして、8月7日
その晩は風が強く少し曇りがちではあったが空には月が輝いていた
そして二人は3年ぶりの逢瀬を楽しむことが出来た。
「そういや、なんで天帝はあんなに別れさせたがったんだろうな」
そんな二人を見ながらりゅう座の姫がかんむり座の姫に問う。
「そんなの決まってるわ。私達、星姫は優秀な子を産む遺伝子を引き継いでいる。
まして織姫は天帝の娘。彦星さんなんかより、ずっと由緒正しいところからの見合い話もたくさん来るもの」
「天帝は天帝なりに娘の幸せを考えてたって訳か」
「ええ。多分ね」
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