貴方を想う(Side-A)
もうすぐあの時間がやってくる。
彼の姿を見られる時間が。
私は昼を司る者。
彼は夜を司る者。
私たちはけして交わることのない存在。
それでも私は彼に会える、夜明けと夕暮を一日の糧にしていた。
目覚めの後と眠りの前にしか出会うことの無い、見ることの出来ない姿。
それでも彼は私を支えるには十分すぎる存在だった。
彼の声、彼の言葉、それを想うだけでたった一人のこの仕事も苦ではなくなった。
彼が闇を紡ぐ仕草はまるで剣舞のように大胆で、隙が無く、それでいて優雅だった。
俗に悪魔と呼ばれる彼の姿を見ていると、昼を織る自分の姿がなんとも不恰好なものに思えて恥ずかしくなる。
彼は私の憧れでもあり、孤独を分かち合ってくれるであろう同士だ。
話しかけてみようかな・・・
ひとつの考えに至る。といっても伝言を残すことしか出来ないのだが・・・返事など期待していない。
ただ一つだけ伝えたい、ただそれだけが望み。
私は己の翼から白い羽を一枚抜くとそっと言霊をこめた
【いつも貴方を想っている】
そしてそのまま羽をその場に置いた。夕暮に彼が来て気付くように、私の言葉が届くように。