悪夢
闇の中から声がする。
「汚いものは綺麗にはなれない」
これは夢だ。
「お前は私と同じだ」
夢に決まってる。
「他人を偽り続けている」
早く覚めてくれ。
「私のことを責められるのか?」
そんな言葉聴きたくない。
「お前の方がよっぽど…」
うるさい。
「こ…」
「うるさい!」
目を開くとそこには見慣れた暗闇が広がっていた。
何時だろう。
携帯に手を伸ばすと、まだ夜明けには早過ぎる時間だった。
夢の言葉が脳に残ってリフレインする。
あの声は、あの闇の中にいたのは…
紛れもなく。
自分だった。
ずっと考えないようにしていたのに。
どうして今頃?
何のために?
答えは分かってる。
忘れそうになっていたからだ。
自分がどんなものなのか。
自分の相応をわきまえろとのお達しなんだろう。
忌々しい。
せっかく伸びようとしていた芽が、手折られた様な。
抱えていた温かなものが温度を失った様な。
心が砕けてしまった様な。
そんな嫌な、とても嫌な感じがして、自分の身体をかき抱いた。
でも、朝が来れば分かるんだ。
自分の形。
自分の色。
自分の世界。
だってそこに光があって、それを欲し続ければいつか答えを見つけることが出来るって信じてるから。
だから、もう少し戦える。
さあ、夢を見よう。
今度は光の夢を。