「あれー今日眼鏡かけてる」
「あぁ、うん」
「目、悪かったけ?」
「…ううん、この服なら眼鏡のほうが良いかなって。伊達だよ、伊達」
とは、言ったものの…そんな訳ない。
眼鏡の似合う服ってどんなだよ。
スーツか?
白衣か?
…どっちも着ないっつうの。
せっかくの久々のデートなのに。
今日のために新しい服買って、靴まで選んだのに。
私としたことが、コンタクトを流しちゃうなんて。
こういう時裸眼の人が羨ましい。
眼鏡をかけることだって、裸眼のままだって選べる。
しかもこれ…
「どうかした?」
「ん?何で?」
「眉よってるよ?」
「あぁ、天気良いから眩しいなって」
「そうなんだ。確かに、眩しいな」
度が合ってない。
古い眼鏡しかなくて世界は滲んで見える。
しくじった。
こんなことならちゃんと眼鏡買っておけば良かった。
とか、悔やんでも遅いわけで。
眉間に皺がよらないようにしながら、一日を過ごすってのは…
つ、疲れる。
でも、あと少し。
ここから駅まで行けばお別れ。
「ねぇ。ちょっと寄り道しない?」
「えっ?」
えええええっ!!!
ちょっと待って。
寄り道!?
「でも、電車の時間が…」
「一本遅らせた位で帰れなくならないから大丈夫」
大丈夫じゃないのは私なのにぃ…
「駄目?」
「ううん。駄目な訳ないじゃん」
反射的に笑顔で答える私。
マジ勘弁してください。
弱いんです、あなたのそれ。
「ここ、ここ」
連れられて来たのは駅近くの歩道橋の上だった。
「???」
理解できない私に、あなたが言う。
「あっち見てみ?」
指差されたのは、歩道橋の向こう。
「わぁ」
そこには光が溢れていた。
夜景には少し物足りないけど、滲んで見える世界はとても綺麗で。
「今度眼鏡買いに行こうな」
「えっ?」
「目、悪いんだろ?眼鏡も似合うし。ただ…」
「ただ?」
「その眉間の皺だけはいただけない」
ビシッと言うあなたになんだか私は笑ってしまった。
ばれてたのか、目が悪いこと。
「なら、無理するんじゃなかった」
「バレバレだっつうの」
そう言って私達はくすりと笑いあった。