クリスマス・イブ
「たまにはこう言うのも良いと思ってな」
そう誇らしげに言うロキはいつものだぼだぼの服を着た少女の姿ではなかった。
ノースリーブのドレスをまとった【闇の女王】という名がふさわしい、大人の女性だった。
「お前、ガキじゃなかったのか?」
「この姿を見ての第一声がそれか?嘆かわしいな、もっとあるだろう?」
「ますます魔女っぽいな」
「…喧嘩売っているのか?」
「いや、全然」
「……もういい。興がそがれた。帰る」
くるりときびすをかえす彼女の腕を俺は強く引き抱きしめた。
「なっ…何を!?」
「綺麗だぜ。そういうお前も好きだ」
「はじめからそう言えば良いのだ」
「イブ…だからだろ?」
「分かっていたならもっと態度というものがあるんじゃないのか?」
「…照れくさいんだよ、俺だって」
「まあ良い。ギリギリ合格点にしてやる」
「ギリギリかよ…まあ良いけど」
「館に宴を用意してある。合格の褒美に招待してやろう」
「館って…行っていいのか?」
館、彼女の住まいが話題に出たのは初めてだった。
かといって、こっちから振るのもおかしいと思ってたし。
だから、ずっと行けない所にあるか連れて行きたくないんだと思っていた。
「駄目な理由は…ないな」
ないのかよ!しかも、さらっというなよ!?
まあ、プレゼントってことに思っておくか。
それが心の平和のためだ。
「じゃあ、支度するな」
「支度?そのままでいいじゃないか」
「いるんだって。30秒待ってろ」
俺はそう言って小さな箱が入ったバックを手に取った。
一応、仕込んでおいてよかった。
「……29、30。では、ゆくぞ」
「ああ」
俺からのプレゼントが気に入っていただけたかは……秘密。
また話す機会があったら教えてやるよ。