絶讃喧嘩中のカップル。

謝りたいのにプライドが邪魔して謝れない彼と、遠回しに告白したのに気付いてもらえず意地になってる彼女。

そして告白されてから一週間。

『お返事頂けませんか』

彼女は再び体育館裏に呼び出された。

しかも心が決まっていないのだから行かなきゃ良いものを素直に行くあたり、何というか。

仕方ない少しだけ手を貸すか。

俺は彼の所に翼をはためかせた。

彼は丁度帰るところで1人だった。


好都合だ。

俺は持っている数少ない力の一つを使って彼に俺がさっきまで見ていた今の彼女の映像を送った。

そしてこう付け加える。

『今行かないと後悔するぞ』

彼は体育館の方に足を向け走り出そうとして止まった。

そして180度、背を向けて帰ろうとするじゃないか。

バカっ、何やってんだよ。

こっちだろこっち。

俺はもう一度思念を飛ばす。

『男ならやってから後悔しろ』

彼はハッとした表情で今度こそ体育館の方へ走り出した。

これで行けば間に合う。間に合ってくれ。

「もう一回言います。僕と…」

「ちょっと待った!!」

聞こえるはずのない声に2人が振り返る。

そこには彼の姿があった。

間に合った。しかも最高のタイミングだ。これでやっとくっつくか?

「なんでここにいるの?」

暫くして彼女が口を開いた。

そこで男を見せ…

「…そんなの決まってるだろ。今後一生無いかも知れないお前が告白される所を見に来たんだよ」

は?

「はぁ?何考えてんの?」

「何だよ、俺のことはいいから続けろよ」

「そんなの出来る訳ないじゃん、バカ」

「バカはないだろ、バカは!」

なんでこうなるかな、まったく。

ほら相手の子が困ってるじゃねぇか。

俺が頭を抱えていると口喧嘩を見ていた男子が口を開いた。

「仲がいいんですね」


おぉ?

もしかして?

よく考えれば我ながら完璧な舞台設定じゃないの、俺。

これはもしかしたらゴールは近い…か?




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