付き合って半年。部活も終わってイチャイチャ出来るようになるかと思ったら、そうは問屋が卸さなかった。
恋人同士である前に私も彼も受験生で、デートと言えば図書館ばかりで、話と言えば勉強やテストのことばかり。
キスだってまだしてない。
これじゃ恋人と言うより仲の良い友達だ。
毎日歯を磨いて、モンダ●ンして、ガムまで噛んで。
いつでも準備は万端なのにいっこうにそんな気配はない。
したいと思ってる、でも私からどういえば、どうすればいいのか分からないまま今日に至る。
しかも、推薦入試で彼は東京の大学へ行くことになってしまった。
私は家の事情で地元しか受けてない。
このままでは何もしないうちに遠距離恋愛になって自然消滅になってしまう。
そんなの嫌だ。
「ねぇ」
帰り道、私は意を決して声をかけた。
「何?」
「どうして何もしないの?」
彼が面食らったような表情になる。
「何もって?」
「……キス…とか」
恥ずかしくなって彼から目をそらす。
私の顔は影になって見えないだろうけど、きっと真っ赤になっている。
「しても良いの?」
彼が私の肩に手をかけた。
全身が心臓になったみたいにドキドキする。
恥ずかしい。
こんなに近い。
聞こえないだろうか。
そして彼の顔が私の元へ降りてきた。
「これあげる」
旅立ちの日、私はストラップを差し出した。
「手作りで色違いのおそろいなんだよ」
「ありがとう。つけるよ」
「休みになったら帰ってきてね。私も遊びに行くから」
「おぅ」
扉が閉まる。
彼は電車が発車するまで笑顔で手を振っていた。
私も彼が見えなくなるまで手を振った。
そして1人残されたプラットホームで堪えきれなくなったかのように涙が落ちた。
私は明るく振る舞えただろうか。
笑顔は歪んでいなかっただろうか。
彼が思い出す時笑顔でいられるように。
純粋な気持ちだけ彼の側にいられるように。