そう切り出せばいいのに、ただその一言が言えなくて。

受話器を握りしめたまま眠れない夜が過ぎていく。

窓の外にある大きな月は明るすぎて涙も出ない。

今泣いたら、

胸の中にあるものが止められなくなるような気がして。

ベットの中で冷たい体を抱くしかない。

何処かの本に書いてあった。

思いは言葉にして初めて固まるのだと。

なら今は何も言ってはいけない。

この思いは抱いてはいけないものだから。

喧嘩をした訳ではない。

電話がかからない訳ではない。

でも、電話は、メールは出来ない。

『したら迷惑じゃないか』

そんなことを思うから。

それだけでこんなにも距離を感じる。

まるで、一生会えないのではないかと思うほどの距離を。


何日眠れていないのだろう。

平等に朝はやってくるのに。

私だけ取り残されているよう。


最後にあった時の、貴方の言葉が引っかかって、私の心を縛っていく。

その言葉がリフレインして、眠れない。

貴方にとっては些細な、なんでもない言葉かも知れない。

でも、それがとても重く感じられた。

尋ねれば良かった。

どうしてそんなことを言うのか、と。

そうすれば気持ちは楽になっただろうか?

全ては後悔にしかならない。

時は戻らないのだから。



あぁ、早く貴方の顔が見たい。

声が聴きたい。

貴方の言葉が欲しい。

そうすれば、この嫌な気持ちはすぐにどこかに行ってしまうに違いないから。

この意気地なしにどうか救いを。



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